土地がある人向け!アパートを建てる際に必要な費用と利回りとは?

土地を所有している人がアパートを建てる場合、土地代が不要(または追加取得が不要)な分、資金計画の入口は有利に見えます。一方で、実際の収益性は「建築費だけ」では決まりません。付帯工事・諸費用・融資条件・空室や家賃下落・管理費・税金まで含めた“全体設計”が必要です。

この記事では、提示いただいた構成を基本的に維持しながら、統計・公的資料・制度資料を根拠に、土地ありアパート建築の費用の見方と利回り(収益性)判断を、できるだけブレなく整理します。

1. 土地ありでアパートを建てる際の費用感は?

1-1. 土地がある場合の建築費用の目安

まず押さえたいのは、世の中で言われる「坪単価◯◯万」は“どこまで含むか”がバラバラだという点です。外構や給排水引込、地盤補強、設計料、申請費などが含まれているケースもあれば、建物本体中心のケースもあります。したがって、相場を掴むときは「定義」を揃える必要があります。

そのうえで“公的な目安”として参照しやすいのが、国税庁関連資料に掲載されている地域別・構造別の工事費用(1㎡当たり)です。これは本来、災害時の損失額算定のための参考表ですが、全国平均および都道府県別に「木造・鉄骨造・RC造・SRC造」の標準的な工事費用(千円/㎡)が示されています。

全国平均(千円/㎡)は、木造217、鉄骨造314、RC造338、SRC造334(いずれも千円/㎡)です。これを坪(1坪≒3.3058㎡)に換算すると、おおむね以下が“参考の坪単価”になります。

・木造:約72万円/坪(21.7万円/㎡相当)
・鉄骨造:約104万円/坪(31.4万円/㎡相当)
・RC造:約112万円/坪(33.8万円/㎡相当)
・SRC造:約110万円/坪(33.4万円/㎡相当)

同じ表では都道府県別の数値も示されており、例えば東京都の木造は230(千円/㎡)、鉄骨造は384(千円/㎡)など、地域差があることが分かります(※この表は「該当都道府県が全国平均を下回る場合は全国平均を用いる」という注意書きがあるため、“そのまま市況の見積単価”として扱うのではなく「目線合わせの参考値」として使うのが安全です)。

また、単価は固定ではありません。建築費の変動を把握するための指標として、一般財団法人建設物価調査会の「建設物価 建築費指数」では、東京(2015年平均=100)を基準に、代表的建物の工事原価の動きが月次で公表されています。建築費が継続的に変動し得ることを前提に、見積の有効期限・資材高騰条項・予備費の取り方を決める必要があります。

1-2. 諸経費の計算方法

土地ありでも、建築費以外に「必ず出るお金」があります。国土交通省の住まい費用解説では、購入・融資に伴う諸費用として、ローン関連費用、火災保険、登記費用、印紙などが発生し得ること、また諸費用は状況により異なるため確認が必要と整理されています。

アパート建築(賃貸事業)でも、項目の中身は「住宅購入」と完全一致しないものの、“工事費とは別に発生する費用が多層にある”という構造は同じです。実務では、次のように「積み上げ」で把握するとブレにくくなります。

(A)契約・融資で発生しやすい税金(代表例)
不動産・建設の契約では、契約書に貼付する印紙税が論点になります。税額は契約金額により段階的に定められています(例:1,000万円超〜5,000万円以下は2万円、など)。
また、不動産の譲渡契約書や建設工事請負契約書には、一定期間の軽減措置があることも示されています(適用期限や対象は契約種類・時期で異なります)。

(B)担保設定(抵当権等)に関する費用
アパートローンでは、土地・建物に抵当権を設定するのが一般的で、抵当権設定登記には登録免許税などが発生します。登録免許税の計算や手続きの考え方は、法務局(解説資料)でも整理されています。
また、特定の「自己居住用住宅」の場合は軽減税率が存在しますが、これは要件(自己居住、床面積など)を満たす必要があるため、投資用アパートが当然に対象になるとは限りません(適用可否は契約形態・用途・要件で変わるため、必ず専門家に確認が必要です)。

(C)金融機関の手数料・保証料・登記実費
融資では、事務取扱手数料などが明示されている商品があり、例としてアパートローンの商品概要で手数料や担保条件が示されています。
特に重要なのは「抵当権の設定費用(登録免許税・司法書士報酬など)は借り手負担」と明記されているケースがあることです。

(D)付帯工事・外構・インフラ・地盤
建築費の見積で抜けやすいのが、外構、駐車場整備、上下水道・ガスの引込、造成、地盤改良などです。これらは敷地条件で大きく変動し、同じ建物プランでも総額が変わります。
なお、諸費用を「ざっくり◯%」で見る実務もありますが、目安の提示は発信者により幅があります。たとえば注文住宅の文脈では「建築費総額の10%が目安」とする例が見られる一方、あくまで目安で業者やローン条件で変わると注意喚起しています。賃貸アパートはさらに条件差が出るため、最終的には積み上げで確定させるのが安全です。

2. 土地ありの場合、資金なしでもアパートは建てられる?

2-1. ローン活用による資金調達

結論から言うと、土地がある人は融資面で有利になりやすい一方、“完全に現金ゼロ”での建築はハードルが高いケースが多いです。理由は、融資が出ても「登記費用・税金・保険・引渡し前後の支払い・運転資金」など、自己資金を求められる場面が残るためです。

融資の基本構造として、アパートローンでは、融資対象の土地・建物に第1順位の抵当権を設定する条件が明示されている商品があります。

加えて、住宅金融支援機構の「まちづくり融資(長期事業資金)」のように、適用要件に合致する場合は、対象事業費の範囲に調査設計計画費等を含めつつ融資率上限100%とされている制度もあります(ただし、地域・事業・建築物の要件があり、誰でも使える一般ローンではありません)。

同ページでは、担保として建物・土地に第1順位抵当権を設定すること、抵当権設定費用は顧客負担となること、返済原資として建物賃貸収入が想定されることなども明示されています。つまり「100%融資」に見えても、周辺費用まで含めて“完全ゼロ”になるとは限らない、という読みが必要です。

さらに、賃貸経営は空室がゼロになる保証はありません。全国の空き家率は13.8%と過去最高水準で、賃貸用の空き家も大きなボリュームを占めます。個別エリアの需給は別としても、「空室・家賃下落を織り込んだ返済余力」を持たないと、資金繰りが破綻しやすい環境であることは統計から確認できます。

2-2. 建築費を抑える工夫

建築費を下げる基本は、「単価を下げる」より“総額が膨らむ要因を潰す”ことです。建築費は経済環境や資材・労務で動くため、指数情報で変動性を把握しつつ、プラン面で手戻りを減らすのが実務的です。

土地ありのアパート建築で、費用を抑えやすい論点は概ね次の通りです(あくまで一般論で、地域の賃料上限を壊さない範囲で考えます)。

・構造選定:同じ延床でも、参考表上は木造の標準工事費(全国平均)が非木造より低い(木造217千円/㎡、鉄骨造314千円/㎡など)。
・付帯工事の最適化:外構・駐車場・造成・引込条件で総額が大きく変わるため、早期に現地条件を織り込む。[2] ・見積の比較:同じ工事でも、見積に含む範囲(本体/付帯/別途)が違うと比較不能になるため、費用項目を揃えて精査する。

「資金なし(自己資金が薄い)」で進めるほど、予備費と運転資金(空室・修繕・税金支払いのバッファ)を削りがちですが、ここを削ると一度の想定外で詰みます。空室リスクが統計的に小さくないことを踏まえ、最初から“安全余力をコストとして計上する”発想が必要です。

3. アパート建築の際の利回り計算と収益性

3-1. 想定利回りの計算方法

利回りは「年収÷投資額」で単純化されがちですが、実務では少なくとも次の3段階で見ると判断が安定します。

表面利回り(グロス)
年間家賃収入(満室想定)÷投資金額。計算式自体は一般に「賃料総額を投資総額で割る」ものとして解説されています。

実質利回り(ネット)
空室・滞納、管理費、税金、保険、修繕などの運営費を差し引いた後の収益(概念的にはNOI等)を分子にする考え方です。国交省資料のシミュレーションでも、管理委託費(賃料の10%想定)、固定資産税・都市計画税、保険料等を織り込んで収支を見る形が提示されています。

総投資に対する収益率(例:NOI÷総投資額)
「諸費用も含めた投資総額」を分母に入れる考え方(FCRのような概念)も一般に解説されています。

ここで土地ありの人が陥りやすい誤解が、「土地は買っていないから投資額に入れない」という考え方です。確かにキャッシュアウトは減りますが、土地は資産として価値を持つため、投資判断では『建物だけの利回り』と『土地価値も含めた利回り』を分けて見るのが現実的です(計算方法の違いで数字が大きく変わるため)。

また、市場が求める利回り水準を外すと、将来の出口(売却)にも影響します。一般財団法人日本不動産研究所の「不動産投資家調査(2025年10月現在)」では、賃貸住宅一棟の期待利回りが都市・住宅タイプごとに整理され、例えば東京の一部エリア(城南)のワンルームで3%台後半といった水準が示されています(これは機関投資家アンケートであり、土地あり個人の小規模アパートにそのまま当てはまる“保証値”ではありませんが、資産の安定性が高いほど利回りが低くなりやすい構造を確認する材料になります)。

3-2. 空室リスクの影響

利回りは、空室率の想定ひとつで簡単に崩れます。全国の空き家率は13.8%で上昇傾向にあり、空き家総数は過去最多です。これは「どこでも空室が多い」という意味ではありませんが、“賃貸が空室ゼロ前提では成立しない”ことを示す重要な背景データです。

空室リスクを織り込むには、少なくとも次の順で収支を組み立てると、過大評価を避けやすくなります。

1) 満室家賃(GPI)を置く(周辺相場は個別調査が必要)
2) 空室・募集損・滞納損を差し引いて実効収入(EGI)にする
3) 管理委託費、税金、保険、修繕などを織り込んで、手元に残るキャッシュフローを見る(国交省の例では管理委託費を賃料の10%で置くなど、費用項目を明示して試算している)。

税金面では、土地ありの人が見落としがちな論点として「住宅用地の課税標準の特例」があります。条例・運用は自治体実務ですが、制度自体は法律に根拠があり、住宅用地に対し課税標準を軽減する仕組みが示されています。[28] 自治体の案内では、小規模住宅用地(概ね200㎡相当まで)について固定資産税の課税標準が価格の6分の1(都市計画税は3分の1)と説明されています。
一方で、管理不全空家等や特定空家等に対しては特例が適用されない場合があることも条文上で明記されています。土地活用を考える際はこの“適用条件”も必ず確認してください。

4. アパート建築で失敗しないために

4-1. 建築会社選びの重要性

アパート建築の失敗は、施工不良だけでなく「見積の比較ミス」「契約範囲の誤解」「運営まで含めた設計不足」で発生します。国交省の住まい費用解説が示す通り、初期費用は契約・融資・登記・保険など多岐にわたり、しかも“見積による”項目が多いので、比較軸を揃えないと判断を誤りやすい構造です。

したがって、建築会社(または建築請負のパートナー)を選ぶときは、価格だけでなく次の確認が現実的です。

・見積書の「本体」「付帯」「別途」の切り分けが明確か
・工期と支払いスケジュール(つなぎ資金が必要になるか)
・引渡し後の修繕・保証の範囲
・管理委託やサブリース提案がある場合は、その契約の前提とリスク

特にサブリース(一括借上)を絡める場合、国の注意喚起が出ています。消費者庁[30]の注意喚起ページでは、サブリース住宅は転貸(又貸し)であり、オーナーとサブリース業者の契約終了等による不利益を入居者が受け得ることなども含め、契約内容の確認を促しています。

4-2. 設計段階でのチェック

設計は「入居者に選ばれる条件」と「過剰投資にならない条件」の綱引きです。前者を外すと空室が増え、後者を外すと利回りが落ちます。空き家率が上昇している環境下では、特に“売れる間取り”より“埋まる間取り”の検証が重要になります。

エリア調査に使える公的ツールとして、不動産情報ライブラリがあります。取引価格、地価公示等の価格情報、防災情報、都市計画情報などを閲覧できる国のサイトとして位置づけられています。
建築前の段階で、周辺の価格・用途地域・災害リスクなどを「同じ地図上で」確認し、家賃の上限・ターゲット・出口戦略(将来売るなら誰が買うか)の整合を取るのが有効です。

4-3. 管理運営の計画

完成後の運営で、利回りを押し下げる代表要因は「管理」と「修繕」です。国交省のシミュレーション資料では、管理委託費を賃料の10%として費用計上する例が示されています(あくまで試算条件ですが、管理コストをゼロ前提にしないことが重要です)。

また、サブリースを選ぶ場合は、国交省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトでも、相手方の目的・意向の確認や、マスターリース契約のリスク説明など、適正化のための留意点が整理されています。契約前の情報提供・説明の質は、将来トラブルの発生確率に直結します。

5. アパート建築の失敗事例と注意点

5-1. 利回りの過大評価

失敗の典型は、次の“ダブル過大評価”です。

・分母:投資額を「建築費だけ」で見て、土地価値や諸費用を落とす
・分子:家賃を「満室・下落なし」で置く

利回り計算は「年間収益÷投資金額」という単純式で説明されますが、その前提(投資金額に何を入れるか、年間収益をどう保守的に見るか)を外すと、数字が“良く見える方向”に簡単に歪みます。[24] 統計上、空室が一定規模で存在することは明らかなので、空室・募集損を織り込むのが前提です。

5-2. 建築費の見積もり不足

見積もり不足が起きる最大の理由は、「建築費」と「事業費」を混同することです。事業費には、印紙税(契約金額に応じる)、登記費用、抵当権設定の登録免許税、司法書士報酬、ローン手数料、保険、付帯工事などが含まれ得ます。

加えて、建築費は市場環境で変動します。建築費指数が月次で公表されていること自体が、建築費が時間とともに動く(=見積が固定ではない)ことの裏付けです。予備費と価格変動条項の読み込みは必須です。

5-3. 空室対策の不備

空室対策の本質は、完成後の広告テクニックより前に、企画(ターゲット×立地×間取り×家賃)の整合を取ることです。空き家率が上昇している環境下では、賃貸需要の読み違いが致命傷になり得ます。

そのため、計画段階で防災・都市計画・価格情報などを確認できる公的ツールで、競合供給や地域特性を把握することが合理的です。

6. まとめ:土地ありのアパート建築では利回りを高められる!

土地がある人のアパート建築は、土地取得費が不要(追加負担が少ない)という意味で、資金計画の選択肢が広がります。一方で、実際に必要な費用は、建物本体の工事費だけではなく、付帯工事・登記・税金・融資費用・保険・運転資金まで多層的です。国の住まい費用解説でも、諸費用は状況により異なるため確認が必要とされており、積み上げで「抜け」を潰すことが前提になります。

利回りは「年収÷投資額」の単純式で表せますが、空室・管理費・税金などを織り込むほど“実質”は下がります。国の統計で空き家率が過去最高水準にある以上、満室前提の計画は避けるべきです。
資金なし(自己資金が薄い)で挑戦する場合は、土地を活かした担保設定で融資を組める可能性がある一方、登記費用等が自己負担となることも明示されています。融資率が高い制度や商品があっても、手元資金ゼロで安全に回すには相応のハードルがある、というのが実態です。

おすすめの記事